【登場人物と背景 壱】
【内村鑑三】
 
時は明治。
  文学者にしてキリスト教者、内村鑑三は記憶をなくした青年を助け、零(れい)という名を与える。
 教会で住み込みで働く零は好青年だったが、何故だか彼と知り合ってから、鑑三の廻りには奇妙な事が
 絶えない。月が笑うのを見る、猫が人に化けるのに出くわす。それは奇妙というより異様の数々。
 得体の知れぬものに、あるとき、袋小路へ追い込まれた彼の身を、間一髪、一人の少女と黒づくめの男が 救う。
  少女は「夜雀」と名乗り、男は「朱鴉(あけがらす)」と言った。
 そのとき鑑三の頭の中をよぎったのは、青年、零の左腕にある、真っ赤な鴉の入れ墨だった。

 
【夜雀】
 
 闇夜に飛ぶ雀の、ちょん、という鳴き声を聞いたら、それは雀ではない。魔だ。
 出会えば禍に見舞われるという、それは夜雀(やすずめ)なのである。


  少女は四国の山奥にある、今はもうすっかりさびれてしまった「忍(しのび)」の隠れ里の生まれ。
 代々、「夜雀」の名を継ぎ、幼い頃から暗殺を生業としてそれを不思議とすることもなく生きてきたが、
 仕事をし損じてから、里の者に追われる暮らしとなる。
  自分の身を探す仲間たちから逃れるため、彼女が隠れみのに選んだのは小さな教会の下働きだ。
 初めて、人を殺すためでなく、自らが生きるために道を選んだ「夜雀」。
  そこに自らを巻き込むさらなる大きな力があることなど、神ならぬ身には、知る由もなく。
                  
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