fake-face 




















**** 緒

フェイク・フェイス






  桜木と涼は、同じベッドで寝る。
一応、きちんと涼は一階に、彼女のための畳敷きの部屋があるのだが、あたりまえのように、眠くなってくると、桜木の部屋に入ってきて、ベッドの中に潜り込む。
 そして、息を殺して兄が眠るのを待ちかまえる。
背中にそうした涼の視線をちくちく感じるようになると、桜木もなんとなく「あ、寝なくてはな」という気分になってくる。
……そそくさとシャワーなど浴びにいき、できるだけ急いで部屋に戻る。そうして、眠いのだろうのに、必死に瞼を押し上げて彼の戻りを待っていたらしい涼の表情が、パッと明るくなるのに、兄馬鹿ながら、やっぱり私の妹は、世界で一番カワイイなぁ……なんて思ってしまうのだ。
 シャワーで火照った体でベッドに入ると、涼が甘く鼻を鳴らしながら、彼の体にじゃれついてくる。
「こ、こら」
 細い指先がからんでくる、その感触のくすぐったさに、桜木は顔を歪める。
「こらこら」
 彼の胸元に鼻先を突っ込み、最近、とみに豊満になってきた体を、ぴったりと擦り寄せ、彼の腰に手をまわして、笑いながら背筋をくすぐりあげてくる涼に、目を白黒させる。
「こらこら、こ、こ、こらぁぁッ!」
 そうこうして……結局、涼は、彼の来ているパジャマを脱がしにかかってくるのだ。
 この格闘が、涼が夜、泊まって行ける日であれば必ず毎晩繰り返され、そのたび、彼は、ブリーフ一枚を死守したあられもない格好まで剥かれてしまう。
 涼は、最後に一枚、今日も取り損ねたことに少し不満の色を示しながらも、そこで初めてニッコリして、彼の胸にその身すべてを預け、目を閉じる。
 その幸せそうな寝顔を見ると、桜木は、抗議するにもできなくて、そのうち、自分もまた眠ってしまうのだ。
 猫のようにしなやかな、涼の体を抱き寄せる。
二人でそうしているときは、何故か、普段の何倍も暖かく感じる。
 なにより、ためらいなく寄ってくる涼の肢体の柔らかさ、滑らかさは手放すにはあまりに心地良い。
 なんというか……気持ち、良すぎる。
人に見られたら、ちょっと、ヤバいかなぁ。
 でも、まぁ、誰にも見られるわけないから、いいか。
涼の気持ちも判るのだ。というより、気持ちは涼も、自分も、同じ。
 自分達兄妹は、彼女が四歳のとき、別れ別れになって。再会したのは、つい数年前のこと。
 だから、離ればなれになっていた時間を少しでも取り戻したい。薄い布一枚ですら、自分たちの間に挟んでおきたくない………目下、彼の不安は、自分が脱がされるだけならまだいいが、いつか彼女が私もといって脱ぎ出しはしないかということくらいだ。この妹なら、そんな日も、早晩、やって来てもおかしくない気もするのが怖い。
 そうなったら………まぁ、それはそれでいいか。別に、不都合もないかな。やっぱり、誰にも見られやしないんだし。
 きっと、つるつるでつやつやで、気持ちいいんだろうなぁ。
………悪くないなぁ。なにしろ、私の涼は、世界一綺麗だから……。
 桜木は、そんな事をぼんやり思いながら、いつも、眠りの中におちていくのだ。




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