緑陰 

(人形遊戯 喜媚さまより戴きもの!)

























   カフェの裏に広がる雑木林。
 それを前にして、ひとり佇む人影。刃。
  強くなり始めた陽射しも気にせず、裏庭の端に立って、いつか立ち回りを演じた場所を少し遠くに見ている。

 半歩先の柵は、結界の境。

 店長手作りの、その小さな柵より先に触れた途端、<オモテ>の誰かが飛んでくる。大体において、それは、眉間のしわを増やした有坂氏なのだが。

 通りすがっただけのはずが、気がつけばそこまで近寄り、暑さも忘れてじっとその林間を見てしまっている。

 セミの声が降るようなそこは、山の匂いを含んだ冷気が広がり、刺すような夏日の降るこちらと比べて別世界のようだ。


「……果心堂」


 呟き、その木立の間に、翻る銀髪が一瞬見えたような気さえして、顔を歪める。

 目が痛い。



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「――ッ」


 たまらず、額を押さえ、かたく目を閉じてうつむいた。
頭を振っても、脳裏に蘇る、あの手合わせの記憶。
 間近で見た、驚いた顔。あの時は、こんな事になるとは思ってもみなかった。


 ――強いな。あんた。

  帰りがけに刃が言うと、面はゆそうな顔をされた。無理矢理いつもの顔に戻して、当たり前だ、と返されたから大笑いした覚えがある。それから、なりゆきと親切心とで暫く居座り、朝晩顔を合わせる日が続いたが、悪い気はしなかった。状況はどうあれ、面白かったのは事実だ。まるで、十かそこらの小娘に戻ったような気分で。


 ――悪いこたァ言わねぇ、魔はやめときな、魔は。


 攫った本人との一騎打ちの最中、投げられた言葉。言い方に、一気に頭に血が上った。それさえなければ変な奴、というところだったが、もはや彼の評価は地に落ちたに近い。

 薄く目を開いて、くっきりと影の落ちる下生えが見える。

 何故そんなに頭に来たかはわからない。正義の味方なんて大嫌いなものを嘯かれたからだろうか。

 気に入っているものを貶されたからだろうか。それとも。


 今更考え込んで、刃の口元に妙な笑みが浮かんだ。





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「……おやおやァ?」


 額を押さえていた手が顎に下りる。引きつる、困惑が混ざった笑み。


「それは、ちょっとマズいんじゃねーの? つか、え? どうなのソレは」


 ぶつぶつと独りごち、乾いた笑みを単調にこぼす。


「あっはっは…………違うよなー。たぶん」


 面白いには面白いが、違う。何と違うかは考えないようにして。


もう何をしに出たのかも忘れ、家の方へ戻りながら、意識的に別の事へと考えを向ける。

 たとえば、永久牢獄の事とか。

入れることしか方法の無いという、全ての理を止める空間。



(理屈から行きゃ、入れる瞬間には理が動いてるって事だよな)



 その為には、入口となる所まで行く必要と、それを開くことの出来る術者が要る。しかし場所すら知らない上に、その僅かな隙を確実に突ける保障も無い。



(あのなめこタラシ込みゃ何でも喋るんだろうが……ぞっとしねーなー)



 引きつり笑いを浮かべつつ、家の方の玄関を上がって、タメ息をひとつ。何にせよ、封鎖から脱出しなければ自由には動けない。


「結局ソレか……」


 居間の近くまで来て呟き、左手の移植ゴテに気付く。


「……あ」


 荒らされたっきりの前庭の花壇に手を入れようとしていた事を、やっと思い出した。行きがけにじょうろを拾って行こうと裏から出たのに。

 また戻って靴をつっかけて出、前庭へ回り込みながらちらりと雑木林に目を向けた。


「どうにか上手いこと穴見つけて、引っぱり出さねェとなァ、お姫様?」





☆★☆
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 「人形遊戯」の喜媚さまから、はぅッ!と、腰がとろけそうな
  物語を戴きましたッ!!!

   果心堂捕縛後のエピソード〜ッ!!! 刃さま、刃さま………ッ!!!
  果心堂、幸せ者すぎます〜ッ!!!
   「人形遊戯」さまでは、
   カフェの裏でのエピソードを他にもたくさんッ。
  アップして下さってて、それがまた、素敵なんすよ………ッ!
   一緒に見て戴けると、さらにお話を楽しんで戴けると思いますッッッ!!!

   
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