(涙ぐんでいる涼を見て、驚いて目を見開く。が、涼は憤然としてその手をうち払い、奥へ行ってしまう)あぁ……喧嘩をするつもりでは、なかったんだが。こちらも誰彼構わずというわけではないという事を、もっとちゃんと伝えれば良かったのか? ……参ったな。葛葉の姫君は、もう少し物わかりが良いと聞いていたぞ。破天荒で我が儘な唯我独尊の破戒巫女じではなかったのか……前評判と、えらく違うじゃないか。本気で、怒らせてしまった。 (檜扇を受け止め、赤くなった手を見て、少し考えて。涼の去った先を見つめてから、腕の間に残る香りに気づき、唇を押さえ、目を細める) いや……ともあれ、こちらは、本気で参ってしまうわけには、いかないんだが。
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