新月からすでに14日 (24日 夜)
果心堂  
(朝からそほそほと降り続いた細い雨がようやくやんだが、まだ、空は厚い雲に覆われている。木々の中を、葉の上から零れる霧のような雨粒の名残に袖を濡らされつ……果心堂、出てくる)

果心堂:
 四郎……無事か。
吾奴め。また、隠れおった。
 これであの新月の夜からすでに、十四日。天魔めはまだ来んか………
 もはや、お前の体力ももつまい!
Date: 2005/02/27/23:32:22   [183]

なんの、お気遣いなく
桜木  
桜木:
(大きな木の根本に腰掛け、果心堂を見上げて、笑う)
 ………なんの、お気遣いなく。
こうみえて、割に丈夫にできあがっています。お借りしているマントのお陰で、寒さもまったく感じないですし。
 それより、果心堂さんのほうがお疲れでしょう?

 昨晩から、また一日、彼を追い、彼に追われて、山の中を走らされどうしだ。

 一体、どんな相手なのか………もう、そろそろ一目くらいこちらが見かける機会があってもいいはずなのに、時折闇からヌッと手が出てくるだけで、その姿がまったく見えないんだから、薄気味悪いですよ、ホントに……

果心堂:
(桜木の横に立ち、やはりまだ案じ顔で腕組みをしている。桜木の顔色が悪いのに気付いているのだ)
 ………すまん。
巻き込んだ。

桜木:
(肩をすくめて、また笑う)
 ここに隠れようと言ったのは私です。
けど、まさか、山を閉じたはずが、彼も入ってきてしまっていたとは、考えもしませんでしたとも(笑)
 おかげでこんな間抜けは羽目に。

謝るのは、私の方です。
 彼と戦っているあなたのお手伝いができるわけじゃない。結局は役たたずで、ここに隠れているだけだ。
 あなたは敵と、こんな山の中に一緒に閉じこめられて、涼が鍵を開いてくれるまでは出ることもできなくなってしまった。
 ただでさえ一郎太さんの安否が気遣われるときなのに………本当に、すみません。
Date: 2005/02/27/23:59:09   [184]

お前が謝るな
果心堂&桜木  
果心堂:
 お前が……謝るな。
オレの方がいたたまれなくなる。
(眉を寄せ、曇天を見上げる)

 ……天魔がこちらにこうまで日がすぎても来られぬのは、あの女のところにも、もしかしたら招かれざる客が行っておるのやもしれん。

 オレと一郎太を襲ったのは二人組だ。
しかし、ここにいるのは、その片割れだけだからな。

桜木:
(少し俯き、涼を案じる顔になる。が、すぐに微笑んで)
 大丈夫ですよ。
あの子は、賢いし、それに、何より、強いから。

(明るい顔で、両手を出して数えてみせる)特に今日あたり、来そうな気がしますよ。なにせ、あの日から指折り数えて今日あたりが満月のはずだ。
 満月の日のあの子は………特別だから。

果心堂:
(何を思い出したのか、これは心から漏れるように、ふ、と、苦く笑い)
 なるほど。
確かにな。
 満月のあの女は、さすがのオレでも手におえん。
 ………昔、化け物どもが、満月の日のあいつに出くわして、化け物だと叫んで逃げ出したのを見たことがあるぞ(失笑)

桜木:
(本気で怒った顔。途端に、表情を厳しくして)
 なんていうことを言うんです。
満月ほど、あの子が綺麗な日はないのに。
兄の私でも、満月の日のあの子を見ると、声をなくして、顔が赤くなってしまうくらいなんですからね。
 化け物、なんて、失敬な。

果心堂:
(この状況でそんな事に真剣に怒っている桜木の緊張感のなさに、ホッと眉間を緩め)
 そういう、「化け物」ではない。
それでもあの女はやはり……異常なのだ。
 人であるならば、本来、あのような力は、持ち得ないもの。元来、繰り返し輪廻をまわるかわりに、融通のきかぬようにできている、人の魂のうつわには、あのように大きすぎる力は入り切らぬ。
 それがたとえ満月の晩一夜のことであってもな。
 人ならぬオレ達がもし似たようなものを目にしたことがあるとすれば、それは………
(空の更に高み見上げて、唇の先で、小さく、呟く)
 昼間、天上に燃える日輪を、間近に見た、そのとき位であろうな。
Date: 2005/02/28/00:17:25   [185]


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