決まりでね。
(白い手)&桜木  
(白い手):
 兄貴はともかくな……そういう『決まり』でね。
 オレは、未熟者の『新約』だから、働く時には、極力、顔を知られちゃならないことになってる。

桜木:
 『新約』?
(言っていることがわからない。頭をひねるが、それ以上は答えてもらえなさそうなので、ただ、頚をかしげるに止める。ややあって、少し天を仰いで)

 さぁ。で、王手ということは、その手で、私は殺されると思っておいた方がよろしいですね?
 ならば、そうだなぁ……
妹に、せめて遺言だけでも届けて戴けると、助かります。
 きっと、今頃、泣きそうな顔で、私の事を探しているでしょうから……
 
Date: 2005/02/28/03:02:13   [194]

一言でいいんです。
桜木  
桜木:
 短い伝言です。
ただ、
「悲しむ必要はない。父上や母上と同じく。私はいつでもあなたと共にある」とだけでいいですから。
 お願いできますか?
きっと、もうすぐ来るでしょう。
 そうすれば山も開き、あなたも外へ出られる。
 そのときに、ちらりとだけ………
あの子の耳元に、そう、囁いていってやって下さい。
 お願いできますか?
(白い手):
(あからさまに、戸惑った声で)
 べ……つに、そのくらいは構わなねぇと思うけど?
 魔物庇ったとしても、あんたは人間なんだし。
 あんまりよく読んでねぇけど、こっちの「決まり」に、遺言伝えちゃいけねぇってのはないはずだ。

桜木:
(ほんのり、笑って)
 そうですか。
助かります。
 ホッとしました。
………では、どうぞ。
 
Date: 2005/02/28/03:12:44   [195]


………?
白い手)&桜木  
桜木:
(数秒待っても、何も起こらない。苦笑いして、頚をかしげる)
 どうしました?

(白い手):
(心底気持ち悪そうに)
 ……潔すぎるのもなんだか不気味なんだよ。

桜木:
(思わず、吹きだす)

(白い手):
 とにかく……魔を助ける人間がいるのも、アジアに多い傾向だよな。
 ここらはまだ、魔と神と人が渾然としてる……兄貴はだから、アジアが大嫌いなんだがな。オレは、その逆で、割とそういうのに興味がある……っていうかさ。それって、文化だろ? 
 魔を匿ったとしてもさ。あんた個人に罪はねぇよな。そういう風に、教えられてきてんだから……
 なぁ。お前さんの理由如何によッちゃ、別にオレはあんたを殺さなくてもいいんだ。
 ちゃんと理由、話してみる?

桜木:
(姿を見せぬ手の持ち主の言葉に、驚いたように目を見開き、次の瞬間、華やかな笑顔で笑い出す)
 おやまぁ………本当に、おかしな人だ!
Date: 2005/02/28/03:29:05   [196]

理由なんて、特別なものは
桜木  
桜木:
(楽しげに目を細め、微笑みながら)
 ですが……残念ながら、これといって、特別に命乞いになりそうな理由も思い浮かばないですねぇ。

 ただ、果心堂さんは、私の古い友人なので………
 友達が困っているから、助けたかっただけですよ。それが、命にかかわることなら、尚更だ。

 ………そういう理由は、あなたたちの摂理の中では、きっと、一番排除すべきものでしょう?
 違うのかな。

(白い手):
(ひどく困惑したふうに)
 あんた……えらく、堂々としてんな。
死にたい人なわけか?
 それとも単なる馬鹿か。
Date: 2005/02/28/03:39:09   [197]



例えば、ね
桜木  
桜木:
(白い手の主の言葉に、ただ、微笑んで。肩に掛けたマントを軽く、ひき)
 例えば、ね………

 このマントは、果心堂さんのものです。
あの人は眷属を呼び、空を飛ぶのに、このマントが必要なんです。
 なくても飛べないことはないそうなんですが……あれば、遙かに勝手がいい。

 それを、ここは寒いからという理由だけで、私に残して行かれる。

 ………ごく、普通の、こととして。

でも、そう言うことを……あなたがたに、理解してもらえるように説明するのは、きっと、とても難しいことなんだろうな。

 命を、なんでも、分けたがる。
あなた達には、きっと。
Date: 2005/02/28/03:45:14   [198]

昔ね。
桜木  
桜木:
(白い手から、いらえはなし。困惑しているのか、何か言い返したいのか……。その沈黙に、桜木の目が、少し、陰惨になり。苦い微笑みを、地面に向ける)

 昔ね……
この山に住んでいた一族がありましてね。
 ごく普通の村だったんですが、中には、ちょっと変わったことができる人間が、揃っていた。

 黙っていても、空気がどこから流れてきたか知ったり、足下の土が、どのようにしてその場まで来たか、知ることができた。

 けして死なない不思議な鷹を、一族は代々受け継いでいましてね。
 それでも別に、誰にも迷惑なぞかけることもなく、毎日を暮らしていたのですが………ある日、村を、焼き討ちにされ、村人は皆殺しにされてしまったんです。

 害意の有るものや危険な魔なら、この山には入れないはずだった。
 そのように、護るため、代々静かな守りを重ねてきたはずの山でした。
 でも………みんな、殺された。
父母が、自分たちの命と引き替えに護り、そこからどうにか逃がされた、一組の子どもたちを除いてはね。

 村を焼きに来たのは、害意のある者ではなかったんですよ……彼らは、事態に直面して、やっと、自分たちが冒した間違いに気付いた。
 結界を張るなら、害意の有る者でなく、恐怖を感じている者を対象にすべきだったんです。
 その証拠に、村を焼きにきた人間たちの目には、ただ、正義感と使命感しかなかった。自分たちを護るために、あの恐ろしいものの住む村を焼かねばならない。そう、信じてやってきた………異なる者への恐怖を克服しきれなかった、ただの「人間」の集団。

 私の中の疑問は、あの日から消えないままだ。
 私が本当に組みするのは、人間であるべきなのか、
それとも……魔なのか。

 それでね。
今は、急場しのぎの結論として、個人だけを見ようと思っているわけです。

 魔も、人も、集団としてではなく、ただの個人としてね。
 好きかキライかで判断する。

 そうすることにして……随分、問題はシンプルになりましたけどね。
 要は、好みの問題でいいって結論なんで……(苦笑)
Date: 2005/02/28/04:10:15   [199]



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