2月11日(火) 涼さま備忘(1)

有坂に連絡をとる

 兄上の日記を覗かせてもろうたぞ。
それで、何が起こっておったのかくらいは知れるようになったが……

「オモテ」に有坂という男がおる。
これがなかなか使える男じゃ。
 まずはこの男に連絡をとった。

 あれやこれやもすったもんだもたいていのことならこの男にいえば片づくのじゃが、今回はなんの心当たりもない様子。

 続けて調べるとは言わせたが、それよりも来年度予算がとか、決算がとかおめいておった……兄上の身の上より大事な事があるかと大喝したが、まぁ、あの男のまわりも、てんやわんやじゃ……

 所詮、世の中、頼れるものは己が一人と思い切るべし。
 兄上は一郎太がさらわれたことのみお心に掛かっておったようじゃが、おそらくそれだけで考えるのは正しうあるまい。
 さらうことが目的であったのならば、なぜ、果心堂でなく、一郎太を狙うたか、じゃ。

 オモテの狩り人は、有坂の知らぬところで勝手に動いたりはせぬ。
あれらは小役人じゃし、狩り人はみな、魔を怖がっておるもの。

 誰が乞われもせんのに、すすんでゆくものか。あれらは仕事で、家の者を
養わねばならんから、不承不承狩りにいっとるのじゃ。
 狩らんですむなら、それに越したことはなかろうし、なにより、一郎太を
さらおうなぞと考えはせん。

 さらおうなぞと思うやつは、手元に持っておかねばならぬ、その理由があるやつだけじゃ。

 果心堂と一郎太の違いといえば、ではなんじゃ?

 果心堂は齢300。
それに比べて、一郎太はまだ若い魔じゃということくらいではないか?

 ……うぬ。
もしや、若いというところで一郎太が選ばれたならば、ことは、一郎太だけではないのやもしれぬ。

 ほかにも消えた若い魔がおらぬかどうか探らせるには、やはり……有坂じゃろうの。
 ……予算の件はともかく、決算の件は泣いてもらおうかの。
特記事項:
 
 後日、御兄君さまから、やはり襲撃が9日深夜から10日の間にあり、店から急ぎ、待避されたことが明らかになったが、この時点では、まだ何もかも不明であり、手がかりになるのは1日、7日、8日の兄君さまの日誌だけだった。

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