(夜。京都の古い家屋の前の道。門柱の脇に小さな古い木の看板が張り付けられている。文字は、『御刀研ぎ 一条』。 二人で門を見上げて)
イサク: 締め出しをくってしまった。なんとも、偏屈な爺さんだ……本気で、ここで待つつもりですか。夜は冷える。どこかに泊まって、明日出直しましょう。待ったところで、何も変わりそうにない。
涼: 時が惜しい。向こうが折れるまで、ここで待つ。(門塀横に腰をかけ、イサクを見上げて)お主は戻れ。わざわざ付き合う必要もないぞ。
イサク: (苦い表情)ここまで来て、それはないでしょう(ため息ついて、隣に座る)……しかし、こんなところに腰をかけて、私たち、捕まりませんかね、警察に。
涼: なんの。捕まる前にはり倒せばよかろ。
イサク: (無茶苦茶だな、この人……) ………そこまでして、助けたいですか。お兄さんを?
涼: (目を剥いて)当たり前じゃ! 兄上をお助けするために、たとえばこの目が要るというならば、両方くれてやっても良い。 この足が要るというならば、腕もおまけにつけてやろう。 兄上は、私の何より大切な方じゃ。 ただ一人の……かけがえのない、兄上じゃ。
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