イサク:
………。(涼が、身じろぎもせず寒さにただ唇を噛んで堪えている事に気付き、深く、厳しく、目を細める)
(黙ったまま、腕を伸ばし、涼を自分の膝の間に引き寄せ、背中から抱く。涼の体のゾッとするような寒さに、眉を寄せつつ、問いかけるように見上げてきた涼に目をあわせず、口調はまぎれもなく非難のそれ)
あなたの根性とやらには、頭が下がりますね、まったく。ご覧なさい。本気で夜が明けてきた。冗談じゃない。なにもこんなやり方ばかりが方法ではないでしょうに……狂気の沙汰だ。
涼:
(歯の根がしばらく合わないながら、 苦笑して)
だから、付き合うなと、言うておっただろうが。酔狂は承知の上じゃ。
イサク:
( 涼の体を、できるだけ腕の中に抱き込もうとしながら)
あなたは、日常からそうだ!
朝4時に起きて水垢離。それから朝のおつとめで、終わればそのまま剣術の稽古。朝食を食べて、次は勉強だ。そこから僅かな昼食をとって、夕刻までこれもすべて修行の時間にあてられる。自由な時間は、夕食前のほんのひととき。
………私には、あなたが何のためにそれほどにその体を酷使するのか、理解できない。一体、何があなたを縛っているのか……私から見れば、自己犠牲に酔っているふうにさえ見える。
涼:
(イサクの言葉に顔を歪め、首を傾けながら、困惑の笑み)
兄上の事じゃがの……この寒さで、一つ、思い出したよ。
イサク:
(桜木の事について聞いたことなどもう忘れていて、思いの外涼の体が温まらないことに、薄く苛立ちの表情を浮かべながら)
はい?
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