有坂: あ、逃がしませんよ、姫さま! 一昨日昨日とまだ無断で外出なさいましたな。そもそも有坂はそれについて……(追おうとしたのを、イサクにさえぎられる)あ……あぁ……行ってしまわれた。 どうしてくれるんです、あなた! そもそも、一体、誰なんだ?
イサク: (黙って目を細めて、ただ、皮肉げに唇を歪める)……お前のような奴が、どうしてあの人の側にいることが許されているのか、理解に苦しむな。
有坂: (直球の悪意にさすがにムッとして) どなたか知らないが、そんな口を聞かれる覚えは私にはない。 この有坂岳彦、確かに力はないが、かわりに頭はある。姫さまが年の僅かな間でも、山を降りて兄君と暮らされるにあたり、ご生活の確保が可能になったのは私の働きがあったればこそと、委細、ご存知での発言ではなかろう。 今のやりとりだけ聞いて、何もかもわかったつもりの横やりは迷惑千万。 さぁ、そこを退いてもらおう!
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