涼: イサクか……待て……いや、良い、入れ (両手で支えた扇を、そっと閉じ、振り返る)
イサク: 何を……しておられたんです? 店の中の空気が、まるで……変質している。これは、
涼: いや。満月が近いでな。できるかと思うて、やってみた。じゃが、まだ力足らずであったようじゃの……うまくはゆかん。
イサク: (腕を組み、首を傾け)何がです。
涼: 世を作るもの。 それらの根元は一つ。 命あるものもまた、なきものも、同様。……これは、一郎太の刀にやろうとしたことと、要は同じことじゃがの。 そこまで、戻る。そして、手繰るのじゃ。 根元では、距離は無意味。また、時間も同じく。関わるのは……ただ、こころ、のみ。その場所を覗くことができれば、扇の上にも、世界が作れる。……んン? (振り返って、イサクの顔色が悪いのに気付く)
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