何も考えられぬ………
  
涼:
(店で。膝掛けをかけ、ただ、座っている。目に生気がなく、暖をとるには膝掛け一枚では寒すぎるのに、何も感じられないらしい。ただ、放心したように虚空を見つめている)
Date: 2005/02/27/05:17:08   [175]

こちらでしたか!
涼&有坂  
有坂:
 姫さま! こちらでしたか……!

涼:
(有坂の声に顔だけ動かして、彼を見る。無言)

有坂:
(眸が黒い涼を見たのは初めてで、事情はわかっていても、一瞬、息を飲む。が、すぐ、気をとりなおし)


Date: 2005/02/27/05:21:43   [176]

しっかりなさいませ!
有坂  
有坂:
(涼を覗き込んで)
 し……しっかりなさいませ!
あなた様がそのような有様でどうなさいます。あなた以外の、誰が兄君さまをお助けするというのですかッ?
 姫さま………姫巫女さま!
しっかりなさいませッ!

涼:
(虚空に見開かれていた瞳に、ワッと涙が溢れる。つッ、と頬を伝う一筋が、有坂の手の甲にも落ちる)
 ………有坂。

有坂:
 (涼の涙を見るのも、初めて。顎を引き、顔を強ばらせる)
 ひ………姫さま………!

涼:
 (虚空を睨んだまま、唇が小さく震える)くや……しいぞ。
 私は、今まで、これほどに我が身の不明を呪ったことはない。
 ようやく満月が来ようというに、我が身は、もう何もできぬ。
 あの時と同じじゃ………
父上や母上を殺された、あの時と同じじゃ。

 誓うたに。
私は、あの時、誓うたに。
 ………何者にも負けぬ力を手にする、と。
 何人にも、たとえ相手が神仏であろうとも………足下に踏みつけられるだけの力あるものになってみせると。

 そうして、兄上たちを護るのじゃと。
あの日、幼き私には何も護れなんだから。
 この私が………護るのじゃと。
わたしは………誓うたのに!
Date: 2005/02/27/05:34:21   [177]



あやつはどこにもおらなんだ!
有坂&涼  
涼:
(不意に何かに火がついたように。有坂に、怒鳴る)

 私にはまた何もできんのか!
一体、私がいままでしてきたことはなんじゃったのかッ?

 有坂。
 4つのとき、私は、神代より生きる古き神の末裔、<牙>の彰郎を師とし、あらゆる術法の大元である荒魂和魂を思いのままに使いこなせるよう、修行した。
 老翁が、兄上と姉上と私を養う条件として、私に自分の跡を継ぐことを求めたからじゃ。
 恐ろしいとは思ったが、やらぬわけにはいかなんだ。
 また、いつ、何時、父上や母上のお命を奪った奴が、我等を捜しにくるやもしれぬ。私は子どもながらに、死に物狂いじゃった………そのとき、あの男は、どこにいた?

 また、その後。
 この日の本をそれまで魔を用いて統べていた闇帝をその座より引き吊り降ろし、新たな日の本の魔の帝として、姫帝の名を得た。まこと、死ぬる思いをして闇帝を征し、我が身の内に、黄金の魂魄を手に入れたのじゃ。
 ……そのとき、あの男はどこにいた?

 いついかなるときも、じゃ。あの男は、それらの場の……どこにもおらん!

 少なくとも、己の血にまみれ、それでも剣を手放さず、這うようにして進んだ、私のような思いはしておらぬ!

 私がなんのためにそのような道を歩んできたと?

 兄上と……暮らしたかったからじゃ!
普通の生活で良い。
 朝起き、夜は寝、ともに……ともに、食事をして。その日の事を、笑うて話せる。
 それだけ良かったのじゃ。
そのために、私は……私が……!

く……悔しいぞ、有坂。
 私は、悔しい。くやしいのじゃ……!

有坂:
(涼の叫び声があまりにも悲痛で、顔を顰め、唇を噛む)
 姫……さま………!
(大きく手を伸ばし、涼の頭を強く胸に抱き寄せる。涼が、関を切ったように、大声で泣きだす。それを聞いて、まるで、自分の身を切られたように、顔を歪める)
 ……わかっております。有坂は、わかっております。姫さまのお心は、すべて、この有坂めにはわかっておりますとも。
 何者にも負けぬというお心の向こうに、何をお求めであったかも。
 兄上さまを……どれほど愛しておいでかも。
(涼の髪に頬を寄せ、沈痛に目を細める)
Date: 2005/02/27/06:02:00   [178]

お聞きくださいませ、姫さま
有坂&涼  
有坂:
 本当でございますよ……。
私は、姫さまが思っておいでより、もっと、はるかによく姫さまのことを存じ上げておるのです(………何を思い出したか、自分に対して、苦く笑ってのち)。

 どのようにして葛葉の老翁さまのところへお越しになり。

 何をされ、今までどのような魔を、どのようにして平らげてこられたか。

 私は………知っております。
なにもかも。

 そして、だからこそ、わかるのです。
 姫さまが、この程度のことであのような男に負けられるはずがないと。

(涼がキッとして自分を睨もうとしてくるのに、素早く何度も首を横にふり)

 あなたさまはお負けになどならない……!
なぜなら……姫さまは、いつも、有坂に仰っておいでではありませんか。

 御身のなかにある力は、その、魂より生じるもの、と。

御身がある限り………その魂が御身にあるかぎり。

 姫さまは、誰にも膝を屈されることはありませぬ。
Date: 2005/02/27/06:27:17   [179]
 【Ne xt】(2月23日(水)葛葉神道家(3)へ)
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