2月11日(火) 涼さま備忘(2)

 
「どよよ〜ん、じゃよ……!」

 
 なんたること。
兄上と果心堂のみならず、安否不明者がもう一名じゃ。
 イサクどのの弟君の行く方が知れぬ。
先だっての新月に店を訪れたとイサクどのの仰ることが確かなら、最悪じゃ、何事が起こったかもまだわからぬが、イサクどのの弟君も、その側杖くったとしか思われぬ。
 これはますますゆっくりとはしておられぬのじゃが、有坂をせっついても、耳の垢ほどの進展もない。若い魔が消えておるかどうかも、まだ何も掴めておらぬというのじゃから、役にたたぬことおびただしいぞ。
事は急を要しておる。
 別途、老翁のつてからも若い魔については調べさせることにした。
爺ぃに借りはつくりとうないが、背に腹はかえられん。
 兄上の身だけならば、けして最悪の事など起こりはすまいが、他に兄上のお気を散らすようなものがあったとすれば(果心堂やら、イサクどのには悪いが、かの弟御なぞ、の)事態は変わる。
 まったくもって………あぁう……頭が痛いわ!
 さてしも、イサクどのは、見かけに寄らず、肝の据わったご仁であるようじゃ。弟御が消えたというに、詰問もなければ、焦ったご様子もない。
 腹を鳴らした私に晩飯を食っておらぬなら、何か作ろうとまで言うて下さる気の良い方じゃ………いささか、腹が据わりすぎておる気もするの。
 まぁ、良い。ここで問いつめられても、私は何も答えられやせんのだ、イサクどのはおそらくまだピンときておらぬのじゃろうが……明日になっても明後日になっても兄上も戻らぬ弟御の行方も知れずで、同じように平然としておられるかどうかはわからぬぞ。

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