2月16日(水) 涼さま備忘

今日は老翁の手伝いじゃ。


 昨日、葛葉へ出入りしたが運のつきじゃ。
老翁につかまっての。

 今日は、一日、祀りを手伝わされたよ。
おかげで体がくたくたじゃ。

 あの爺ぃ、自分の体は思うように動かぬで、人使いが荒いにもほどがある。

 とまれ、老翁は幼い私や兄上を救ってくれた、命の恩人じゃし、
私にとっては育ての親じゃ。
 まぁ、親孝行と思うてつとめるよりほかないの。

老翁は、兄上のことにも骨を砕いてくれておる。
 その礼かたがた、それなりの働きはしようものさ。

 ……したが、気になる事を言っておったの。
若い魔が消える話はあったも、若い魔を集めている魔の話はついぞ流れ来んと。

 老翁に隠し事のできるような魔が、この日の本におるとは思えぬ。

なにしろ、人でありながらも齢三千有余歳、あれはあれで人の形をした立派な大妖怪じゃ。
 となれば、……魔では、ないのかもしれぬな。

「魔」でなければ、では、「人」か?
 人が、魔を集める?
そのようなことが、果たしてあろうかのぅ……?

 魔が、喰らうために人を集める話は聞いたことがあっても、人が魔を狩るのでなく集める理由なぞ、前代未聞じゃ。思いつかぬ。

 ぬぅ……。

 さてしも、屋敷から戻ると、店からおかしな匂いがしておった。

慌てて行けば、イサクめがぼぅっと立っておるでの。
 また驚いた。鈍いにもほどがある。あの臭さは尋常ではなかったぞ。 目が回るかと思うた。

 あれは、きっと何かおったに違いない。イサクめが鈍いやつで逆に幸いであったのかもしれんな。
 何か気付いてしまっておったら、無事にはすまなんだかも知れぬもの。

 もしかしたら、兄上の行方を知るものが、再び店に戻っておったのかもしれぬ。それを思うと、悔しいてならんが、とにもかくにも、イサクが無事で良かったのじゃ。
 正直、これ以上、誰かに消えられては、こちらが持たんぞよ。

 「オモテ」との連絡と、魔に気に入られやすい有坂の護りがわりに、奴のもとに貸してある式鬼、太郎冠者と次郎冠者、どちらか一方を呼び戻し、イサクにつけておいてやった方が良いかもしれんな。

 あれは、なんだか危なっかしい奴じゃ。
それに、ガリガリのやせぎすで、ひどく弱っちそうじゃものな。
 魔も好んで食いやせんだろうが、玩具がわりに五体千切られかねん。

つけておいてやろうかと言ったら、なんだか苦笑いしておったがの。
 私は、そうした方が良いと思うのじゃがのう……
明日、もう一度、話してやるか。
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