2月19日(土)2 涼さま備忘
有坂を襲うたは誰ぞ?
バタバタじゃ……
太郎冠者、次郎冠者の符が私のところに戻った時点で、
有坂の身になんぞ起こったのはわかったで、
すぐに鶯と燕を飛ばせて、有坂を連れてこさせたのが良かったようじゃ。
有坂に外傷はないが、なにやらひどく消耗しておる。
体の中の「気」が……
生きるにぎりぎりという程度にしか残されておらん。
おかげで息もあらく、体もひどく冷えてきておる。
………何があった?
有坂は口どころか、目も開けられぬようで、これでは、話を聞くどころではない。ただ、時々、うわごとのように、『太郎』と『次郎』の名を呼ぶばかりじゃ。
お主の身を護って破かれたと、言うてやるのは酷な話じゃろうな。
有坂は、ほんにことのほかあれらを可愛がっておったで……
しかし、『太郎冠者』『次郎冠者』は、私が手塩にかけて育ててきた式鬼。私が初めてうった式鬼でもあり、幼少の頃より、ずっと側に控えていたものどもじゃ。
これを、たとえ私が直接使役していたわけではないにせよ……しかも、有坂というお荷物があれらにあったとしても……返されるとは……、一体、いかなるものが、敵なのじゃ。
………兄上の身が案じられる。
胸が潰れそうじゃ。
一刻も早く、一郎太の身柄と思うが、術法などしておる間に、有坂の息は絶えるじゃろう。
今宵は、こやつについておってやるしかあるまい。
こちらから、「息吹永世」か、「息長(おきなが)」か、いずれかの術法を用いて、延命と気の養生をおこのうてやるしかあるまいでの。それにしても、こうまで『気』を奪われるとは………
誰が、どのようにすれば、こうなる。
私でなく有坂を狙うたわけはなんじゃ?
有坂は、魔でもない、ただの一介の官吏じゃというに。
……有坂、頑張ってくれよ。
面倒な奴じゃが、お前がおらぬと色々の不便もある。
この涼のために、なんとか、目を覚ませ。
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】(2月19日(土)深夜 葛葉神道家 涼様居室へ)
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