有坂が「オモテ」に呼び戻された。
私にも挨拶ができなんだことを謝っておいてくれと、イサクに伝言していった。
あれも、死にかけたと思うたらもう仕事か。
忙しい奴よの。
もしや、兄上のことについて何かわかったのなら良いのじゃがのぅ。
………いかん、こんな風に、他力本願な事を考えるようでは、私もいささか参っておるな。そのせいか、体の調子もなにやら良うない。
イサクにはそれみたことかと言われそうじゃから言わんが、何故じゃろう、体が重ぅ感じるし、時々、頭が鈍ぅ痛む。
うぬぬ。これが、プレッシャーという奴かのぅ?
なにもかも振り出しに戻ってしもうたが、気をとりなおしてゆかねば。
それにしても、あの偏屈者のイサクに、気を強く持てと元気づけられてしもうた。
なんにでもぶつくさ言うあの男が、なんとコーヒーまで煎れてくれたぞ。
何か悪いことでも起こらねば良いがな(苦笑)
私は、普段、あまり毛唐の飲み物は飲まぬのじゃが、兄上の煎れたやつだけは口にしておった……はじめて兄上以外の人間が煎れたコーヒーを飲んだが、兄上のやつより、いささか、苦かったの。
ま、何事も心じゃ、心。ものは心。
それにしても奴の目に、私は、相当へこんでいるように見えておるのじゃな。
まぁ、へこんでいるのは確かじゃが……
だが、まだ最悪というほどではないのじゃがの。
私一人ではない、あやつも弟御を探しておる。
あのように平気な顔をしておるのも、なかなか気骨のいることじゃろうて。
それにしたって、あやつに騒がれても私に今はできることがないことを、判っての事じゃろう。責められても致し方のないところ、気まで遣わせておる。……申しわけのない話じゃ。
しかし……ほんに、一人でのうて、良かった。
さぁ、私がしっかりせんでどうする!
なんとしても兄上をお助けするのじゃろう?
もう一度、始めから、何もかも洗い直しじゃ!
まずは、店から、の。現場百回、ヤマさんも言うておる!
あの桜の絵、すべて見直していかねばなるまい。
兄上が歴然として残された手がかりは、
考えればあれだけじゃからのう! |
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