兄君桜木さま御日記
2月7日(月)
ご自室にて記載?
特記事項:
関連資料ファイル
「果心堂」という名で
御兄君がお呼びの第三
種生命体については、
「童身聖母(びるしん
さんたまりあ)」事件
(同天魔降臨関係事象
ファイル)に初めて
その名が出る。
・棲処は鎌倉。
・吸血系の鬼。
・齢三百有余歳。
・人よりの転化。
人であった時の名は
猪熊教利。
・特記すべき女嫌い
・涼さまを宿敵と目の
敵にしている。 |
カフェに古い友人が来てくれました。
来てくれた、というとかなり語弊がありますね。
少なからず、トラブルを抱えられてのご来店でしたので……
ここからしばらくは家に居て戴くつもりです。
ご覧になればお分かりの方もいらっしゃいましたでしょうが、
果心堂さんは、人間ではいらっしゃらない。
普段は鎌倉のお屋敷からそうお出にならない方が、
一気に飛んで来られたせいでしょう、服も翼もぼろぼろになっておいででした。
とても放ってはおけますまい。
昨日はまだ落ち着いておられなかったようで、なかなか事情が判りづらかった
ので、おいおい聞かせて戴くつもりです。
とはいえ、大事が起こったことだけは確かなようですので、そうはのんびり
としていられないかもしれませんが……とにかく、何もわからない以上、慌て
ても益はないと、言い聞かせるくらいしか、いま出来ることはなさそうです。
いつもなら夜通しのおつとめをおえて、朝方帰ってくる涼が、昨晩からまだ
帰ってこないのも気になります。
本当は、日の出とともに眠りにつく性の果心堂さんが、涼が戻るまで起きて
いると頑なに言い張るのを無理に休ませた手前、何の状況の変化もないでは、
申しわけがたたない気もします。
保険がわりに、「あちらのスジ」へは問い合わせをいれておくほうが良いの
かもしれません。
とはいえ、涼は果心堂さんの仰っているような「狩り人」ではないし(あれは
果心堂さんの誤解です。あの子は、遊びの退屈しのぎで狩っているだけで……
いや、これを口にすれば、また果心堂さんを怒らせるか)本来、危害にもなら
ない者を、そんな、滅多やたらに狩って廻るほど、「あちら」も、けしてお暇
ではない。
……年度末が近いから、予算消化かな? いや、それにしても、不可解だ。
一郎太さんをさらったとなれば、さらに不可解です。
「狩り人」はその場で命を奪う事こそお役目で、連れ帰る意味などございませ
ん。それが連れ去ったとなると、これは、「あちら」のお仕事だとは考えが
とうございます。
一郎太さんのお体さえ、無事ならば、いいのですが……
さて、そろそろ果心堂さんが目を覚まされる時間だ。
落ち着いて話が出きる程度には、気持ちを取り直して下さっていれば、いいの
だけれど。 |